雪がとけたら
あの日…あいつが吐いた日からあいつは体調を崩し、しばらく面会謝絶となっていた。
風邪をこじらせたあいつは、体力の低下からか肺炎にかかりかけていたのだ。
見舞いに行きたかったが、あいつは誰とも会いたくないと面会謝絶を通していた。
あの日の言葉が、脳裏を過る。
「あいつ…どこか悪いんですか?」
僕の一言におじさんは少し肩を動かしたが、やがてゆっくりと話し始めた。
「…拒食症って…知ってるかな」
…ドクンと、心臓が跳ねた。
「ストレスや不安などから、体が食べ物を受け付けなくなる。悟子は…拒食の気があるみたいなんだ。」
僕を気にしつつも、おじさんは話を続ける。
「あの子には昔から、心労ばかりかけてきた。あの子の母親も…あまり病状がよくなくてね。僕も彼女に付きっきりになってしまって…。あの子が『モデルの仕事がしたい』と言い出した時、正直嬉しかったんだ。あの子は…前に進んでいる。僕が思うよりずっと強いんだって…。正直、過信しすぎたんだ。あの子なら…1人でもきっと大丈夫だと、思い上がっていた」