雪がとけたら
……………
軽く深呼吸をし、ドアノブに手をかけた。
あいつに会うのは一ヶ月ぶりくらいだけど、どんなに長く会ってなかった時よりも緊張する。
あいつが倒れてから、僕はケアの仕方を間違えていた。
あいつが元気にならなきゃいけないのは、体じゃなく心だった。
僕が支えなきゃいけないのは、あいつの気持ちだったんだ。
それをあいつに伝えるため、今日僕はここに来た。
…緊張した面持ちで、ドアを開けた。
ベッドに横たわるあいつ。
一ヶ月前と変わらない点滴が、痩せた腕に痛々しく刺さっている。
僕は足音をたてないように横に行き、眠ったあいつの顔を見つめた。
…無理してた?
…俺に心配かけない様に、無理して色々食ってたんだよな?
僕はそっとあいつの前髪を撫でた。
「…ごめんな」
…ふいにあいつが目を開ける。
あいつの瞳が僕を捉えると、弱々しく、でもはっきりと「雪ちゃん」と呼んだ。
あいつが僕を呼ぶ声が、世界で一番好きだ。