雪がとけたら



……………

軽く深呼吸をし、ドアノブに手をかけた。

あいつに会うのは一ヶ月ぶりくらいだけど、どんなに長く会ってなかった時よりも緊張する。


あいつが倒れてから、僕はケアの仕方を間違えていた。

あいつが元気にならなきゃいけないのは、体じゃなく心だった。

僕が支えなきゃいけないのは、あいつの気持ちだったんだ。


それをあいつに伝えるため、今日僕はここに来た。





…緊張した面持ちで、ドアを開けた。

ベッドに横たわるあいつ。

一ヶ月前と変わらない点滴が、痩せた腕に痛々しく刺さっている。


僕は足音をたてないように横に行き、眠ったあいつの顔を見つめた。



…無理してた?


…俺に心配かけない様に、無理して色々食ってたんだよな?

僕はそっとあいつの前髪を撫でた。


「…ごめんな」


…ふいにあいつが目を開ける。

あいつの瞳が僕を捉えると、弱々しく、でもはっきりと「雪ちゃん」と呼んだ。


あいつが僕を呼ぶ声が、世界で一番好きだ。



< 248 / 300 >

この作品をシェア

pagetop