雪がとけたら
「…起きると思った」
僕が呟くと、あいつは上半身を起こした。
助けようとするが、「大丈夫」と呟く。
起き上がったあいつと僕の間には妙な沈黙があったが、僕の「体大丈夫?」という問いかけがそれを破った。
あいつは黙ったまま俯いている。
その視線の先には、何ヵ月か前のあいつの載っている雑誌があった。
「…それ」
あいつは小さく呟く。
「それ、取ってくれる?」
僕は指示に従い、雑誌をベッドテーブルに置いた。
あいつは細い指で何ページか捲り、あるページでその手を止めた。
…春服に身を包んだあいつ。
黒いタートルネックに白いワンピース。
スラッと伸びる手足は誰が見ても理想そのもののスタイルだ。
「…綺麗なあたし…」
ポツリ、落とす様に呟く。
「…今のあたしと、大違いね」
僕はあいつに目をやった。
眉間にしわを寄せたまま投げやりに笑う。
「見てよ、この腕。ガリガリで…気持ち悪いよね。この頃のあたしを見てくれてた子達だって…今のあたし見たら、絶対がっかりする」