雪がとけたら



………………


その日は朝から、父さんが一日中家にいた。


父さんは日曜日でも仕事であまり家にいないから、僕はなんだか嬉しかった。


父さんは僕に絵を描いてくれると言った。

昔美術部だったらしくて、父さんは凄く絵が上手い。

僕は、あいつと僕とチロの写真を渡してそれを描いてもらった。


父さんの手が動く度に、僕等が少しずつ完成していく。

その過程を見るのが、僕はとても好きだった。



お昼ご飯を食べる時も、父さんは珍しくテレビをつけなかった。

大抵家にいる日曜日は、囲碁かゴルフをつけている。

でもその日は、三人で食卓を囲んでお喋りしながら食べた。


なんだかそれが、とても不思議だった。



夜も同じ様に食卓を囲んだ。

テーブルには、僕の好きなハンバーグが並んでいた。

「美味しい?」と聞く母さんに、「美味いよ」と答える。

いつものことなのに、母さんはとても喜んだ。



お風呂も父さんと入った。

でもその日は珍しく、湯潜り競争をしなかった。

何故だかわからないけど、しなかった。



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