雪がとけたら
「…そんなことないよ」
「どうしてそんなこと言えるの!?」
あいつは突然声を荒げ、雑誌を床に投げつけた。
僕は驚いてあいつを見つめる。
「どうしてそんなこと言えるの!?雪ちゃんに何がわかるの!?あたしは…あたしは、応援してくれてる人達を裏切った。みんなを裏切ったのっ!!あたしが…何も知らないとでも思ってるの?世間の人がなんて言ってるか知らないとでも思ってるの!?」
あいつは息を荒げながら叫んだ。
僕は立ち上がり、思わずあいつの肩を掴む。
「…知ってるのよ、あたし。病気だって…拒食症だって言われてるんでしょ?痩せすぎて表に出れないモデルになったって言われてるんでしょ!?あたし…あたし、もう戻れない…もう…」
…あいつの瞳からは、とめどなく涙がこぼれてくる。
それをすくう事もなく、あいつは呟いた。
「雪ちゃんも…雪ちゃんも呆れたでしょ?こんなあたし…もう、嫌でしょ?あたし…こんな弱くて…なんで…なんでこんな、弱いの…」
あいつは下唇を噛み締めた。
強く噛みすぎてつうっと赤い血が顎に伝う。
掌をおでこに持っていき、悔しそうに何度もそこを叩いた。