雪がとけたら
…あいつが言った事は、西から聞いていた。
インターネット等にあいつの中傷が書き込まれているらしい。
そんな中傷見たくもなかったが、それより何よりあいつには決して見せたくなかった。
でもあいつは、知っていた。
苦しんでた。
…僕はそっと、あいつに口付けた。
そのまま顎に唇を伝わせ、流れた血を舐める。
「…綺麗だよ」
唇を離した僕は、そっと呟いた。
「悟子は綺麗だよ。今も昔も…ずっと綺麗だ」
あいつは表情を歪める。
とめどなく流れる涙を僕の指がすくった。
「誰が何を言おうと関係ない。悟子は…俺にとって、一番綺麗な人だ」
…こんな歯の浮く様なセリフ、よく言えたなと思う。
でもこれは、あいつを励まそうだとかそんなことを考えて言ったわけじゃなかった。
本当に、そう思ったのだ。
「だから…何でも言えよ。悟子の汚い部分も弱い部分も…吐き出せよ、俺に。幻滅なんて…絶対にしないから」
…幻滅なんてしない。
するわけない。
僕にとってのあいつは、もうそんな対象じゃないんだ。