雪がとけたら


「…あたし」


あいつはしゃくりあげながら言った。

僕はあいつの目を見ながら話を聞く。


「あたし…食べたいの。食べたいけど…食べれなくて…っ」
「うん」
「食べなきゃいけないって思えば思うほど…口にするのが怖くなるの。吐いちゃうんじゃないかって…お、思…」
「うん」
「あたし…あたし本当は、ちゃんと知ってるの。応援してくれてる人も沢山いるって…だからこそ…あたし、こんなあたしじゃ駄目だって…強く…強くならなきゃって…っ」
「…うん」


僕はゆっくりと、あいつの肩を抱き寄せた。

細く折れそうなあいつの肩。

それでもしっかり抱き寄せる。


「…弱くていいよ」

あいつの耳元で呟いた。

「弱くていいよ。頼ればいいよ。歩けるとこは自分で歩いて、無理なとこは俺に頼ればいい。弱いからこそ…弱いからこそわかる気持ちだって、あるだろ?」


自分が弱いと、誰もを傷付けてしまうんじゃないかと思ってしまう。


でも違う。


弱いからこそわかる気持ちだってある。

弱いからこそ、できることだってあるんだ。



「大丈夫だよ。悟子は…絶対、誰かの力になれる。悟子のままで…きっと。」




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