雪がとけたら


そっとあいつから離れる。

涙で濡れた頬を手で拭き、僕は言った。



「弱さ故の強さを、お前は持ってる」



…みんなが思うほど、あいつは強くはない。

抱えきれない苦しみを背負いながら、それでも強くなろうともがく弱い人間だ。

僕だってそうだ。


でもだからこそ、そんな人の気持ちがわかる。
そんな人の、力になれる。


そんな強さを、あいつは持ってる。


…だって僕は、あいつのそんな強さに何度も何度も救われてきたんだ。



「…雪ちゃん」

あいつは僕の手を握り呟いた。

「あたし…本当は、何を言われてもよかった。誰に何を言われても、大丈夫だった」

つうっと、涙が頬を流れる。


「本当は…雪ちゃんに嫌われるんじゃないかって…、こんな弱いあたし、雪ちゃんに嫌われるんじゃないかって…それが一番…怖かったの」


あいつは細い腕で、弱々しく僕に抱きついた。


「嫌わないで…お願い。あたし…雪ちゃんに嫌われたら生きてけない。雪ちゃんなしじゃ…生きてけないよ…」


僕はそんなあいつを抱きしめ、「嫌わないよ」と呟いた。

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