雪がとけたら
第十一章【最後の倖】




……………


「うはーっ!!まさに白銀の世界っ!」


いやっほぅなんてベタな叫び声をあげながら駆け出した一久は、案の定雪の中にずぶりと転んだ。


「やると思った…」

呆れた僕の呟きに、西が横でくくっと笑った。


「みんなぁ!!早くーっ」

コテージの前で思い切り手をふるナァと、窓を開ける佐久間さんが見えた。

「今行くよ!」と僕は叫び、あいつに「寒くない?」と聞いた。

「大丈夫」と笑うあいつの頬は、随分ふっくらしてきた様に思う。


そんなあいつに微笑み返し、荷物を持ってない方の手を取った。


「行こう」












…「卒業旅行?」


ことは一ヶ月前に遡る。

無事新しい年を迎え、あいつは退院して寮で安静にしていた。


「まぁ…お前は卒業できないけどさ」
「悪かったですねー」

ぷぅっと膨れてみせるその顔は、以前のあいつそのものだ。


あいつは仕事や体調不良が重なり、結局僕達と一緒に卒業はできなかった。

春には仕事に復帰する予定なのでそのまま退学という道もあったが、あいつは「卒業だけは絶対する」と留年の道を選んだ。

そんなとこも、あいつらしいと思う。


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