雪がとけたら



……………


「もぉ~、雪ちゃんどうしたの?」


サクサクと雪を踏む音が二人を包んでいた。

あいつの手を引きながら僕はコテージの裏に回る。


「何の話してたのよ」
「や、まじどうでもいい一久の冗談だから」

「ふぅん?」といかにもふに落ちなさそうな返事をしながらも、ひょこひょこと僕の後ろをついてくる。



「ほら、ここめっちゃ景色いい」


山とは反対側を見下ろすと、そこは街が広がっていた。

そんなに大きな街じゃないけど、所々存在する雪の積もった屋根が綺麗に輝いている。



「わぁ…綺麗」
「だろ?来たときに絶対ここ綺麗だと思ってたんだ」


僕等は並んでそれを眺めていた。

握った手が温かさを伝える。

景色に見とれるあいつの横顔を見ながら、僕は小さく微笑んだ。





…ふいに、背後に足音がした。
思わず僕は振り向く。


「あ…」


そんな僕に気付き、あいつも「どうしたの?」と振り向いた。

隣のコテージの影から、小さな女の子がひょこっとのぞいていた。

足元には、小さな雪だるまがちょこんといる。


< 259 / 300 >

この作品をシェア

pagetop