雪がとけたら


眠くなり、ベッドに行こうとする僕に、「今日は三人で寝よう」と父さんが提案した。

今思うと突然すぎる提案だけど、その時は特に気にも止めなかった。


僕は久しぶりに、父さん達の部屋で寝た。


親子三人川の字で。


「お休み」という二人に、「おやすみ」と返す。

そのまますぐに、僕は眠りについた。



その日見た夢までは覚えてないけど、多分、幸せな夢だったと思う。


そうであって欲しいと思う。










…次の日目覚めると、父さんも母さんも起きていた。

「親戚の集まりがあるから」と言って、支度をしている。

「俺は行かなくていいの?」と聞くと、「大人だけの集まりだからいいの」と母さんが答えた。


僕は、母さん達より先に家を出た。
二人は玄関まで見送ってくれた。

「行ってきます」と言う僕に、「行ってらっしゃい」と言う二人。

エレベーターの前であいつが待っているのに気付いて、僕は急いで玄関を出た。

走りながら、背中にドアの閉まる音を聞いた。












…それが、僕が両親を見た最後だった。








……………





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