雪がとけたら



……………

案の定、一久とナァはすぐに彩架ちゃんとはしゃぎまわっていた。
精神年齢が同じなのだ。

あいつと佐久間さんは二人で雪だるまの胴体を作り、西と僕はコテージの階段に座ってそれを眺めている。

「思い出す?」
「え?」
「彩架ちゃん。あのくらいの頃、思い出すんじゃない?」

西は煙草を出そうとしたが、彩架ちゃんを気にしてか途中でやめる。

「そうだな…」

僕は彩架ちゃんを見た。

あいつが彩架ちゃんの頭に積もった雪をはらい、二人で笑いあっている。


…あのくらいだっただろうか。

僕があいつを、好きだと気付いたのは。


「懐かしいな、やっぱり」

楽しい思い出だけじゃなかった。

両親を亡くしたという、辛い記憶も兼ね備えていた。

でもあいつがいれば、そんな記憶は苦しいものにはならない。

…優しいものになる。


「雪!西君!こっち来いよ~」

雪まみれになった一久が、僕達に向かって大きく手を振っている。
僕達は顔を見合せて苦笑し、立ち上がった。
「よっしゃ!雪合戦するか!」
「まじ?やるかぁ!?」


僕達は童心に帰った様にはしゃぎまわる。

日が沈むまで、僕達の笑い声が響き渡っていた。





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