雪がとけたら
あいつがキス以上のことに戸惑いを感じていることは、僕は十分わかっていた。
そして、その事を気にしていることも。
…でも、ゆっくりでいいんだ。
ゆっくり、ゆっくり、ひとつになっていけばいい。
「…うん」
あいつは素直に頷いて、僕の胸に顔を埋めた。
僕はそんなあいつの頭を撫でながら、込み上げてくる幸せを実感する。
「悟子?」
「ん?」
「…好きだよ」
「…あたしも、好き」
僕等は夜の闇の中微笑みあい、優しいキスを交わした。
優しく、温かいキスを。
…それは多分、一番切ないキスでもあった。
……………