雪がとけたら


あいつがキス以上のことに戸惑いを感じていることは、僕は十分わかっていた。

そして、その事を気にしていることも。




…でも、ゆっくりでいいんだ。


ゆっくり、ゆっくり、ひとつになっていけばいい。




「…うん」




あいつは素直に頷いて、僕の胸に顔を埋めた。


僕はそんなあいつの頭を撫でながら、込み上げてくる幸せを実感する。









「悟子?」
「ん?」
「…好きだよ」
「…あたしも、好き」









僕等は夜の闇の中微笑みあい、優しいキスを交わした。


優しく、温かいキスを。










…それは多分、一番切ないキスでもあった。










……………








< 264 / 300 >

この作品をシェア

pagetop