雪がとけたら



……………

「忘れ物ない~?」

ナァがリビングから叫ぶ。
一久は部屋から顔をだし、「大丈夫」と言った。


一泊二日の旅行はあっという間に過ぎていき、気付けばもう帰りの時間が近付いている。

「二日間遊んだな~」
「彩架ちゃん、可愛かったね」
「久遊びやすかったでしょ?精神年齢近くて」
「お前にだけは言われたくねぇよっ!」

リビングにどっと笑いがおこった。
僕もあいつと顔を見合せて笑う。

…結局二日目も彩架ちゃんと僕達ははしゃぎまわり、気付けば全身筋肉痛だった。

特にどこかに出掛けたりだとかはしなかったが、十二分に思い出に残る旅行だ。

名残惜しいが、そろそろ時間が近づいていた。

「じゃあ、最後に一杯コーヒーでも飲んで帰る?」

西の一言に、あいつと佐久間さんが立ち上がった。

「じゃあみんなの分入れる…」


…瞬間、部屋にインターホンが鳴り響いた。

一瞬静まり返る。

ナァが立ち上がり、「叔父さんかな」と入り口に向かった。

みんなの視線を集めたドアを開けると、そこには若い女性がいた。

「あ…」

軽く会釈をする彼女と僕達は知り合ったばかりだ。


…彼女は、彩架ちゃんの母親だった。
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