雪がとけたら


彼女は部屋を覗きこむようにしながら、「すみません、彩架が長い間お邪魔してしまって…」と言った。

嫌な予感が背中をかける。


「あの…彩架は…?」

僕達の間に彩架ちゃんがいないことに気付き、彼女は不安げな表情を見せる。

ナァも眉間にしわを寄せながら、「彩架ちゃん、来てませんけど…」と言った。

彼女の顔から、血の気がさっとひくのがわかる。


僕達は立ち上がり、入り口に集まった。

「彩架ちゃん、いつからいないんですか?」

手を口元にあてて表情を曇らせる彼女に、西が聞いた。

「はい…小一時間前かしら…彩架、『お兄ちゃん達に遊んでくれたお礼言ってくる』って出ていって…。帰ってこないから、私てっきりまた遊んでいただいているものだとばかり…」

僕は時計を見る。
針は5時を通りすぎた所だ。
辺りは随分暗くなっている。

「あ…」

その時、佐久間さんが呟いた。

みんなの視線が佐久間さんに集まる。

「どうかした?」
「いや…確か彩架ちゃん…昼間遊んだ時、山に冬にしか咲かない花があるんだって言ってて…あたし達に見せたいって…」

佐久間さんの表情が曇った。
それは僕達も同じだった。

「まさか山に…?」





< 266 / 300 >

この作品をシェア

pagetop