雪がとけたら


「ごめんなさい…こんなことに巻き込んでしまって…」

彼女は泣き腫らした顔で呟いた。

僕達は首をふり、「絶対見つかりますから」と励ます。



…僕は山に視線を送った。

昼間の彩架ちゃんの笑顔を思い出す。




『彩架、お兄ちゃんが欲しかったの。だからお兄ちゃん達が本当のお兄ちゃんになってくれたら、すごくすごくいいのになぁ』









「俺、もっかい見てくるよ」


僕はダウンのフードをかぶり言った。


「捜索隊が行ったのと反対の山、見てくる」
「危ないぞ?風も出てるし…」
「ヤバいと思ったら引き返すよ」


こんな寒い中、彩架ちゃんは一人で遭難してるんだ。


…こんな所で待ってなんかいられない。




「…わかった。俺も行く」

西はそう言うと、懐中電灯を取り出した。
一久もそれに続く。


「じゃあとりあえず、近場の山を探そう。ヤバいと思ったら引き返すこと。いいな?」


西が確認する様に言い、僕達は頷いた。


< 268 / 300 >

この作品をシェア

pagetop