雪がとけたら



……………


あいつに言わせると、その日はとても寒かったらしい。


初雪が降るんじゃないかと言われたようだったけど、僕の記憶に雪はなかった。


僕の記憶にあるのは、会ったこともないような大人達が、寒そうに喪服の上から腕をさすっている姿だ。


その日が寒かったかどうかすら、僕は覚えていない。












「事故じゃなくて、心中だったらしいわよ」

「嘘、本当に!?」

「ブレーキをかけた跡がなかったんですって。」

「信じられないわぁ…小さなお子さんまでいるのに…」

「なんでも、旦那さんの仕事がうまくいってなかったみたいで…」

「借金とか抱えてたのかしら?」

「多分、自分たちの保険金で払おうとしたんだって…」

「…なんにしても、ひどい話だわぁ」

「お子さんを連れていかなかったのだけが、せめてもの救いかしらね…」









……………




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