雪がとけたら
目を閉じる。
馬鹿みたいに繰り返し願う。
目を開ける。
…変わらない、白い世界。
目を覚ましてよ。
早く、現実に戻して。
…この喪服を、脱がせて。
髪を切った。
失恋したわけでも、葬式に合わせたわけでもない。
これは一種の願掛け。
目を覚ました時この髪が元に戻っていたら、これが全て夢だと証明できる。
きっと戻ってる。
そう願い、眠りにつく。
…でもとうとうこの日まで、髪が元に戻ることはなかった。
失恋したわけじゃない。
だって恋は失ってない。
今でも君を想ってるし、きっと君も同じ気持ちだ。
失ったのは、恋じゃない。
失ったのは、君。
この白銀の世界の中で、
世界一愛しい君を失った。
君は今、
二度と覚めない、夢の中。
まるでこの、白銀の世界のような。
……………