雪がとけたら



目を閉じる。



馬鹿みたいに繰り返し願う。



目を開ける。








…変わらない、白い世界。














目を覚ましてよ。



早く、現実に戻して。












…この喪服を、脱がせて。























髪を切った。


失恋したわけでも、葬式に合わせたわけでもない。


これは一種の願掛け。


目を覚ました時この髪が元に戻っていたら、これが全て夢だと証明できる。



きっと戻ってる。


そう願い、眠りにつく。








…でもとうとうこの日まで、髪が元に戻ることはなかった。

















失恋したわけじゃない。


だって恋は失ってない。



今でも君を想ってるし、きっと君も同じ気持ちだ。



失ったのは、恋じゃない。














失ったのは、君。












この白銀の世界の中で、


世界一愛しい君を失った。

















君は今、


二度と覚めない、夢の中。








まるでこの、白銀の世界のような。




……………









< 273 / 300 >

この作品をシェア

pagetop