雪がとけたら









……………





「…悟子」






…目を開けると、目の前に千歌がいた。


泣き腫らした目であたしを見つめている。



千歌はあたしの肩にそっとふれ、「御焼香、しに行こう?」と言った。










…御焼香?










「悟子?」

「…ごめん、先に行ってて?少し外の空気…吸いたいから」



あたしは出来る限りの声を出してそう呟いた。

それでも千歌に聞こえるか聞こえないかくらいだっただろう。



「…一人で大丈夫?」



不安げな千歌の顔があたしの背中を見つめた。

あたしはどうにか頬に力を入れて微笑む。


それがあまりにも無理矢理な笑顔だったから、千歌の瞳にうっすら影ができた。


千歌がそっとハンカチを目元に持っていくのを尻目に、あたしは外へ向かう。











…白銀の世界へ。












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