雪がとけたら





…一晩あけると、昨日の吹雪が嘘だったかのような晴天だった。


荒れ狂っていた雪達も、今は静かに太陽を反射させている。





そんな静かな世界の中に、雪ちゃんはいた。






少しだけ窪みができている崖に彩架ちゃんを押し込む様な形で、眠っていた。

雪ちゃんが着ていたのは薄いセーターとズボンだけで、後は全部彩架ちゃんに着せていた。


冷たい雪から彩架ちゃんを守る様に。


雪ちゃんの足首には赤い雪が積もっていて、怪我をしていることが見てとれた。



「この崖から落ちたんだろう。彩架ちゃんを見つけたのはよかったが、この足と吹雪じゃどうしようもなかったのか…」



捜索隊の人の呟きが耳に響いた。




二人は急いで病院に運ばれた。

あわただしく動く周りを見ながら、あたしにはどこかリアリティがない。

ただ、震える手で触れた雪ちゃんの頬の冷たさだけが、妙にリアルだった。










リアルだった。










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