雪がとけたら



…ふいに足元をすくわれた。


思わず足がもつれ、膝をつく形で倒れ込む。


肩で息をすると、口から白い息が吐き出される。


あたしは何度もそれを繰り返し、手には水滴がたまっていった。




…雪がとける。




あたしの吐く息で、雪の結晶は少しずつ少なくなっていく。







あたしは思わず息を止めた。


そのまま仰向けに倒れる。


背中に雪の冷たさを感じた。






…空を見上げ、息を吐き出す。

青空に、雲のようにあたしの白い息が浮かんだ。


何度も何度も、浮かんだ。












…ねぇ雪ちゃん。



あの優しい日々も、苦い涙も。



温かいぬくもりも、あたしを呼ぶあの声も…。





この雪がとけたら、全て消えて無くなってしまうの?





この白銀世界の中にいるあなたは、




雪がとけたら、本当にいなくなってしまうの?








…雪がとけたら、












何が残るの?













……………






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