雪がとけたら






……………


「西君」


顔をあげると、佐久間さんがいた。

それまで彼女が前にいるなんて気付かなかったことを考えると、俺は相当ぼんやりしていたらしい。



「悟子のとこ?」

俺の手荷物を見ながら呟いた。

顔に大分疲れが見える。



俺はなるべく明るい声で「うん。戸田さん、起きてる?」と返事をした。


「起きてるよ」
「…話せる?」
「…うん、多分」


佐久間さんは少し俯いた。









…中川が雪山の中で見つかった日、戸田さんは倒れた。

佐久間さんはそれからずっと、病院にいる戸田さんにつきっきりなのだ。



正確に言えば、見張っているのだろう。











…彼女が、中川の後を追わない様に。






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