雪がとけたら
……………
大人達の間に、あいつが見えた。
泣き崩れて一人では立てないおばさんを、おじさんと二人で支えていた。
あいつはいつも着ている花柄のスカートをはいていなかった。
見たことのない黒いワンピースを着ていた。
長い髪は、綺麗に頭の上でおだんごになっている。
俯いた横顔に、まつげの影が落ちていた。
いつものあいつより、何倍も大人に見える。
しゃんとした佇まいは、今まで僕が見てきたあいつの中で、一番綺麗だった。
…一番、綺麗だった。
あいつの視線が、僕の方に向いた。
落ち着いた綺麗な顔立ちが、ゆっくりと崩れていくのがわかった。
「雪ちゃ…」
おぼつかない足取りで僕に向かって歩き、僕の隣に座った。
膝の上にある僕の手を両手で握りしめる。
僕とあいつの掌の上に、ポツポツと大粒の涙が落ちた。
肩を震わせながら、あいつは泣いていた。
僕より背が高いはずなのに、隣にいるあいつは、とても小さく感じた。