雪がとけたら
…ふいに電子音がやみ、黒い画面が揺れた。
『なぁ、これついてんの?』
『ちょっと!もうついてるよ?』
『え、まじ!?』
ガサガサと揺れる画面が、次第に落ち着いてくる。
小さな画面の中は、見覚えのある場所だった。
寮の二段ベッド。
…雪ちゃんの部屋だ。
『ほら、早く早く!』
『え~…まじでやんのかよ…』
画面の端からナァちゃんが出てきて、逆端にいる人を引っ張り出す。
『ほら座って!もうカメラ動いてるよ』
「…雪ちゃん…」
…雪ちゃんだ。
嫌そうな顔で二段ベッドに腰掛け、いつもの仕草で頭をかく。
チラッとカメラを見るその瞳と、あたしの目があった。
…それだけであたしの思考は、全て雪ちゃんに支配される。
『じゃ、始めるよ~?』
ナァちゃんが急いで画面から外れ、画面の中には雪ちゃんだけになる。
『はい、では中川雪君!!戸田悟子さんに対する愛を!語っちゃって下さぁ~い!』
妙に鼻にかかった声でナァちゃんが言い、他のみんながヒューッと囃し立てた。