雪がとけたら
『えー…、なんかあいつらがさ、またお前の誕生日にドッキリをやろうって言い出して…だからその…俺が他の女とデートしてるとか、そんなん全部嘘だから』
話の内容が見えないまま、雪ちゃんは続ける。
『なんか…改まって言うのもあれだけど…』
少し間をおいて、軽く深呼吸して言う。
『18歳の誕生日おめでとう、悟子』
…悟子…
『なんか…な。うん。…つか何言えばいいんだよ…』
戸惑いながらナァちゃんの残していった紙に目を通し、『好きになった理由って…』と呆れた様に呟いた。
やがてその紙を元の位置に戻すと、少し考える様に黙り込む。
…あたしも同じように、黙って雪ちゃんの言葉を待った。
『…始めは…』
ゆっくりと、雪ちゃんの口が動く。
『始めは、理由とかあったと思う。お前を好きだって思う理由が…何かしら、多分。』
小さな頃の記憶が脳裏に浮かぶ。
初めて手を繋いだ、あの日も。
『でもさ。もう今更…理由なんてないんだよな。お前を好きな理由なんて…そんなんもういらないよ。どんなお前でも…変わらず好きだと思う』