雪がとけたら


締め付けられる様な胸の痛み。

目の前にいるのは確かに雪ちゃんなのに、雪ちゃんの声は届いてるのに。


なのにどうして、手を伸ばしても届かないの?









少し照れたように俯いた雪ちゃんは、そのまま続けた。


『…18の誕生日にさ、指輪やるって言ったよな。一緒に…選び行こうな。でさ、ずっと…来年も再来年も、またこうやって「おめでとう」って言える…言い合える関係でいれたらなって、思う。』



…ビデオの中の雪ちゃんは、あたしに向かって言っていた。


今のあたしに向かって、一緒にって…。











次の瞬間いきなりドアが開き、みんながどっと駆け込んできた。



『ヒュー!言うねぇ、雪!』
『きゃーっ!雪君おっとこまえ~っ』
『な…っ、お前らいつからいたんだよっ!』


顔を真っ赤にした雪ちゃんをみんなが囃し立てる。

『戸田さん、お誕生日おめでとうーっ!』
『雪君と末長くお幸せに~っ』






…そこでビデオは、プツッと途切れた。

病室にふわっと、窓から風が舞い込む。

あたしは真っ暗になった画面を、瞬きもせずに見つめていた。









雪ちゃんの残像を、探した。



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