雪がとけたら



……………


僕はおばあちゃんに引き取られることになった。

幸いおばあちゃんの家はマンションから近く、転校なんてことにはならなかった。


僕は今までと同じ様に、あいつと学校に通った。

空っぽな心を抱えて、学校に通った。






「中川、どうしたの?」
「父ちゃんと母ちゃんが死んじゃったんだって」
「だから今、あいつ心の病気らしいよ」



周りはこんなことを言っていた。

でも僕は、否定も反論もしなかった。

僕は病気なのかもしれない。

だって二人が居なくなってから、僕は一度も笑っていない。


一度も、泣いていない。





…「雪ちゃん」


窓ガラスにあいつが映った。

景色からあいつへと視線をずらす。

何も言わない僕の前に、何も言わないあいつが座った。



あいつは最近、よく僕のクラスに来ていた。

休み時間になると、決まって前の席に座った。


二人は何も話さない。


でもあいつは、僕の側にいた。

ただ、側にいた。



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