雪がとけたら
放課後になり、僕は何も言わずに下駄箱に向かった。
あの日から僕は、クラブにも出ていない。
いつも一緒だったサッカーボールも、今は部屋の片隅に転がっていた。
靴を履いて門に目をやると、あいつがこっちを見ながら立っていた。
僕は俯いたまま門に向かって歩く。
あいつは僕の後ろから、だまってついてきた。
あの日から僕等は、また一緒に帰るようになった。
昔みたいに、楽しいお喋りやランドセルの音はない。
ただ静かに、二人歩いて帰っていた。
…公園の前で、僕の足は止まった。
僕等より幾分か幼い子ども達が、砂場や滑り台で遊んでいる。
「ママー!」
その中の1人が、僕等の方に向かって走ってきた。
僕等の横を、優しそうな女性が通りすぎる。
彼女は小さな我が子を抱き上げて、微笑んだ。
…僕は黙って、その光景を見ていた。
まるで映画でも見るように、黙って、まっすぐに。
「…帰ろう」
あいつは僕の手を引いて歩き出した。
僕はあいつに引かれるがままに歩き出した。
夕日の中で、僕等の影が寂しそうに繋がった。
……………