雪がとけたら



放課後になり、僕は何も言わずに下駄箱に向かった。

あの日から僕は、クラブにも出ていない。

いつも一緒だったサッカーボールも、今は部屋の片隅に転がっていた。



靴を履いて門に目をやると、あいつがこっちを見ながら立っていた。

僕は俯いたまま門に向かって歩く。

あいつは僕の後ろから、だまってついてきた。



あの日から僕等は、また一緒に帰るようになった。

昔みたいに、楽しいお喋りやランドセルの音はない。

ただ静かに、二人歩いて帰っていた。





…公園の前で、僕の足は止まった。

僕等より幾分か幼い子ども達が、砂場や滑り台で遊んでいる。


「ママー!」



その中の1人が、僕等の方に向かって走ってきた。

僕等の横を、優しそうな女性が通りすぎる。

彼女は小さな我が子を抱き上げて、微笑んだ。




…僕は黙って、その光景を見ていた。

まるで映画でも見るように、黙って、まっすぐに。







「…帰ろう」


あいつは僕の手を引いて歩き出した。

僕はあいつに引かれるがままに歩き出した。


夕日の中で、僕等の影が寂しそうに繋がった。






……………




< 31 / 300 >

この作品をシェア

pagetop