雪がとけたら



……………


それは本当に突然だった。


何の前触れもなくやってきた。

朝起きて、突然思ったのだ。



…何で俺、ここにいるんだ?




僕はその日、学校をさぼった。










…もう何時間もそこにいた。

空高くにいた太陽も、今では山に半分隠れていた。

何時間もそこにいて、何時間も繰り返していた。




…目の前の河原には、僕とあいつとチロがいた。

僕が蹴るサッカーボールを、チロが全力で追いかける。

あいつはその後ろから駆けていき、ボールとじゃれるチロに抱きついた。


そんな僕等を、父さん達は笑って見ていた。


青いビニールシートに、母さんの手作り弁当。

父さんと母さんはそこに座り、あいつのおじさんとおばさんは、川に石を投げていた。



僕は笑っていた。

あいつも笑っていた。

チロも笑っていた。

おじさんもおばさんも笑っていた。


父さんと母さんも、笑っていた。






…何で今、僕はあそこにいないんだろう。



何でこんな所で、1人で座っているんだろう。








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