雪がとけたら



僕はゆっくりと立ち上がった。

転びそうになりながら土手を駆け降りて、河原に立った。




…家族写真なのに、僕だけいなかった。

そんなの絶対、不自然だ。

元の形に戻るには、僕が間に入らなきゃ。



…あの写真の、真ん中に…。










…「雪ちゃんっ!」


あいつの声が、聞こえた。

はっとして振り替える。

服を濡らして、転びそうになりながら、僕の方へ向かっていた。

そんなあいつの姿を見て気付いた。





僕は、川の中にいた。





お腹の辺りまで水があって、ジャケットの裾が不自然にプカプカと浮いている。



…僕は何をしようとしていた?



自分の掌を見つめながら、あいつがたてる水しぶきの音を聞いていた。




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