雪がとけたら
「雪ちゃんっ!」
必死に水を掻き分けて、あいつは僕の目の前まで来た。
背の高いあいつは、僕よりも水に浸かっていなかった。
なのに僕より、濡れていた。
長い髪の毛から、川の水が滴り落ちる。
「何してるのっ!?」
息を切らしながら、あいつは僕の肩を掴んだ。
この細い腕にどこにこんな力があるのかと思うくらい、力強く掴んだ。
肩で息をしながら、あいつは真剣に僕を見つめる。
「俺…」
僕はあいつの目を見て言った。
「…家族写真…もとに戻さなきゃって…。あの写真の真ん中に…ほんとは俺も、いるはずだから…。だから…」
…パチンと、乾いた音が響いた。
遅れて僕は、頬に衝撃を感じた。
驚いてあいつを見る。
僕の肩を掴んでいた手で、あいつは僕の頬を全力で叩いた。
その目は涙で濡れていた。