雪がとけたら
瞬きを忘れた僕に向かって、あいつは泣きながら呟いた。
「いやだよ…。いなくならないで…。雪ちゃんを…連れてかないでよ…っ」
僕に向かって言っているのに、それは僕に向けられたものとは思えなかった。
「いやだ…いやだよ…っ、雪ちゃんがいなくなるなんて…いやだよ…っ」
あいつはそう言って、僕を抱き締めた。
あいつの髪からは、川の臭いとシャンプーの香りがした。
…あいつの腕の中で、僕は泣いた。
二人がいなくなってから、初めて。
「なんで…なんで俺を置いてったんだよ…っ」
しゃくりあげながら、僕は叫ぶ。
「死んじゃったら…死んじゃったら会えねぇだろぉ!?おじいちゃんになるまで生きなきゃ…っ、一生懸命生きなきゃチロの所に行けねぇじゃねぇかよっ!なんで…っ、なんで死んだりするんだよ…っ」
あいつは僕を、力強く抱き締めた。
泣きながら、抱き締めた。
「ひとりぼっちにするなよぉ…。」