雪がとけたら



……………



その日僕等の街に、初雪が降った。



その年最初の雪。


川に入ったせいで寒くて凍えそうだったけど、僕等の掌はあったかかった。




…父さん達は死んだ。

僕を置いて死んだ。

それは紛れもない事実だった。

でも…






『雪は、精一杯生きなきゃね。』






母さんの言葉が心に浮かんだ。


あれは母さんの、優しさだった。


そうだよね?

母さん。









…初雪は、僕の心に優しく降り注いだ。



僕は父さんが好きだった。


僕は母さんが好きだった。


そしてきっと、
二人も僕を好きだった。





…好きだった。







……………


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