雪がとけたら
……………
「知ってる?」
「何を?」
「女の人は、喪服姿が一番綺麗なんだって。」
「何で?」
「一番哀愁が漂って、一番色っぽく見えるらしいよ」
「…そうかもな」
「え?」
「俺の両親の葬式で見た、黒いワンピース姿の悟子…それまで見た中で一番綺麗だった。」
「…大切な人を見送る時は、一番綺麗でいたいもんね。」
「そうだな…」
「ねぇ雪ちゃん。」
「何?」
「雪ちゃんがあたしを送る時は、一番いい喪服を着てね」
「…絶対やだ」
「何でよ?」
「悟子に俺の喪服姿なんか見せたくねぇよ。お前こそ、俺を送る時は一番綺麗な喪服着ろよな」
「絶対やだ!雪ちゃんを送るなんて考えられない!」
「俺だって同じだよ」
「あは、これじゃ埒があかないね」
「だな」
「…一番綺麗じゃなくてもいいかぁ。雪ちゃんといられれば、それでいいや。」
……………