雪がとけたら


……………


「まだ坂続くのかよー」


クラスの男子が愚痴っている。

僕もいい加減疲れてきた。

清水寺に行くには、この永遠に続く様な坂を登らないといけないらしい。


道の両側には沢山のお土産屋さんが並び、僕達の心を引き付けた。

「買い物は帰りよ」と言う先生を無視して買い込む奴らもいる。

僕は買わずに、八つ橋の試食だけきっちり頂いた。






…「雪ちゃん」


八つ橋を口に含みながら、その声がする方を向く。

僕のいる場所より少し下から、あいつが駆けてくるのが見えた。

手には土産屋の袋を握っている。
あいつも無視して買い込んだ口だろう。

僕の隣まで来ると、ふうっと息をつき笑顔で言った。


「見て、風車」


あいつが袋から取り出したのは、千代紙で綺麗に作られた風車だった。

「土産は帰りって言われただろ?」
「雪ちゃんだって、試食食べてるじゃない。」
「買ってないからいいんだよ」
「そっちのがよっぽど悪いよ」

クスッと笑い、あいつは風車を掲げた。


「だって無くなっちゃったら嫌なんだもん。帰りまでに売りきれちゃうかもしれないでしょ?」


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