雪がとけたら
「そんなに気に入ったの?」
あいつが掲げた風車を、僕も見上げる。
何の変哲もない風車だ。
「うん、一目惚れ。…回らないかなぁ…」
…一目惚れ。
この土地は、何かと何かを惹き付ける効果があるのかな。
そんなことを思いながら、「歩けば回るよ」と呟き歩き始めた。
あいつも、風車を見ながら僕に並ぶ。
「あ、回った」
嬉しそうにあいつは呟く。
そんなあいつを見ながら、僕も嬉しくなる。
カラカラと風車の回る音を聞きながら、僕はあいつに昨日聞いた話をした。
僕の両親の出会いの話。
あいつは風車を見つめたまま聞いていたが、話が終わるとその手を下ろした。
「悟子がその風車に惹かれたみたいに、父さんも母さんに惹かれたのかな」
僕は呟いてあいつの持つ風車をとんっと揺らした。
ゆっくりと、それは回る。
「雪ちゃん」
歩きながら、あいつは呟いた。
「あたし達もやろうよ、恋占いの石。」
あいつの一言に、僕は立ち止まる。
立ち止まって、あいつの方を向いた。
真っ直ぐな目。
…胸が、高鳴る。