雪がとけたら


「そんなに気に入ったの?」

あいつが掲げた風車を、僕も見上げる。

何の変哲もない風車だ。

「うん、一目惚れ。…回らないかなぁ…」



…一目惚れ。



この土地は、何かと何かを惹き付ける効果があるのかな。

そんなことを思いながら、「歩けば回るよ」と呟き歩き始めた。

あいつも、風車を見ながら僕に並ぶ。


「あ、回った」


嬉しそうにあいつは呟く。

そんなあいつを見ながら、僕も嬉しくなる。

カラカラと風車の回る音を聞きながら、僕はあいつに昨日聞いた話をした。


僕の両親の出会いの話。


あいつは風車を見つめたまま聞いていたが、話が終わるとその手を下ろした。


「悟子がその風車に惹かれたみたいに、父さんも母さんに惹かれたのかな」

僕は呟いてあいつの持つ風車をとんっと揺らした。

ゆっくりと、それは回る。

「雪ちゃん」

歩きながら、あいつは呟いた。

「あたし達もやろうよ、恋占いの石。」


あいつの一言に、僕は立ち止まる。

立ち止まって、あいつの方を向いた。


真っ直ぐな目。



…胸が、高鳴る。



< 46 / 300 >

この作品をシェア

pagetop