雪がとけたら
「…やりたきゃ一人でやれよ」
僕は急に恥ずかしくなり、視線をそらして歩き始めた。
本当は僕だってやりたかったけど、クラスの奴らからの冷やかしを考えるとその一言が口をついたのだ。
僕の後ろから、あいつもゆっくりついてくる。
「…ふんだ。」
…あいつの小さな呟きは、風車の音と共に風に乗って消え去った。
清水寺という所は、なるほど有名であることが頷ける様な場所だった。
その佇まいは荘厳で、入り口から僕達は圧倒された。
ガイドさんが説明してくれた『清水の舞台』は、確かに覗き込むと足がすくむ。
僕はクラスの友達と、それなりにはしゃぎながら写真を撮ったりしていた。
あいつは、気付いたら僕の後ろからいなくなっていた。
多分クラスの女子と一緒なのだろう。
地主神社の横を通りすぎる時、僕はチラリと目線を送った。
縁結びの神様としてガイドさんが説明していたので、沢山の女子が見える。
父さん達の出会いの場所を見てみたい気もしたが、あそこにあいつがいたら困ると思い、やめておいた。
通りすぎながら、「またいつか来ればいい」と心の中で呟いた。