雪がとけたら
「きゃっ」
彼女も相当驚いたらしく、小さな悲鳴を上げた。
その声で、女子の視線が一斉に降り注ぐ。
僕は目敏く、その視線の中にあいつを見つけた。
「…雪ちゃん」
驚いたあいつは、ただでさえ大きな目を益々見開く。
僕は「ちょっとごめん」と呟き、大胆にも女子部屋に足を踏み入れた。
真っ直ぐにあいつに向かって行き、その手を取る。
「ちょ…雪ちゃん」
戸惑うあいつをよそに、僕は手を引いて部屋を出た。
閉まりかかったドアの隙間から、「きゃーっ」という小さな女子の黄色い声が聞こえた。
…冷静を装いながら、僕の心臓はハイスピードで動いていた。
…フロアのソファーに、二人で腰かける。
さっきと同じ様に、自販機の音が響いていた。
たださっきと違うのは、隣にあいつがいること。
それだけで僕の耳には、自販機の音よりも心臓の音が鳴り響いていた。
…体半分が、熱い。
「…びっくりした。どうしたの?いきなり」
しばらく黙っていたが、先にあいつが口を開いた。
先生にばれないように、小声で話す。