雪がとけたら
「…別に。なんとなく」
「なんとなくって…」
僕は恥ずかしくなり、言葉を濁した。
あいつともっと思い出を作りたかったなんて、口が裂けても言えなかった。
僕等の間に、夜の静けさが満ちてくる。
「…この傷、どうしたの?」
ふっと目をやったあいつの膝には、女の子らしいキャラものの絆創膏が張られていた。
あいつは少し戸惑った様に言う。
「…転んだの」
「どこで?」
軽い質問だったが、あいつは先を続けようとしなかった。
そんな態度をとられると、益々気になってくる。
「なんだよ、どこだよ」
「だから…」
あいつは僕に軽く背を向けて呟いた。
「…地主神社」
…予想外の場所に、僕は二の句が繋げない。
「だって雪ちゃん…やりたきゃ一人でやれって言ったでしょ?…どうしてもやりたかったんだもん」
あいつは小声で続けた。
「あれ…なかなかうまくいかなくて。でも…どうしてもたどり着きたくて、何回もやったの。…転んだなんて、雪ちゃんには言いたくなかったのに…」
あいつはそこで言葉を切った。