雪がとけたら
あいつに言わせるとそのキスは抹茶の味だったらしいが、僕はそんなの全く覚えていなかった。
「京都だからそう思ったんだろ」と言う僕に、「だって直前まで抹茶キャンディ食べてたもん」とあいつは言い張った。
だから、僕等のファーストキスは抹茶味ということになっている。
僕はまぁ、それでもよかった。
何にせよ、お互いのファーストキスがお互いであったことの証になる。
『ファーストキスは、抹茶味』
ちょっと年寄り臭いのが、玉に瑕。
…その日僕はなかなか眠れなかった。
眠ろうと目を閉じても、そこにはあいつがいた。
ドキドキして、益々目が冴えて、再び目を開ける。
その繰り返しだった。
…あいつもこんな気分なのかな。
そんな事を考えたりもする。
そしてまた、目が冴えてしまうのだ。
修学旅行、最後の夜。
…誰よりも、眠れない夜。
……………