雪がとけたら



……………


修学旅行最後の1日は、祇園の周辺で買い物をした。

僕はあいつと待ち合わせて、あいつの両親へのお土産を買った。

おばあちゃんへのお土産は清水寺で買ったから、僕はもう買うものはない。

家族へのお土産を選ぶ友達を見て、胸が痛くないと言ったら嘘だった。


あいつはそんな僕に気付いていたんだろう。

「一緒にお母さん達のお土産選ぼう」と言ってきた。


あいつの優しさが、嬉しかった。


…あいつの母親は、母さんが死んでから目に見える程気落ちしていた。

無理もない。二人は親友だったのだ。

だから僕等は、ふざけた様なお菓子を沢山買った。

変なパロディを見つけると、二人で笑って片っ端から買っていった。

こんなお菓子でおばさんが元気になるとは思えなかったけど、少しでも元気になればと思った。




僕等は沢山笑った。


両親が死んでから、こんなに笑ったのは初めてだったかもしれない。



…こんなに幸せだったのは、初めてかもしれない。



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