雪がとけたら



「ねぇ雪ちゃん、これ見て」


お菓子を見ていた僕は、あいつの手のひらを覗く。

あいつが差し出したのは、小さなストラップだった。

京都らしい舞妓さんのキャラクターで、その下には『ゆきちゃん』というタグがついている。

「可愛くない?」
「…女の『ゆき』じゃん」

僕はぶすっと呟いた。

僕の名前はどちらかというと女の子の方が多く、こういう名前キーホルダー等は、圧倒的にピンク率が高いのだ。

幼い頃は、それが嫌で仕方なかった。

「いいじゃん。あたしこれ買おうかなっ」
「ば…っ、やめろよっ」
「何でよ~?」

ひひっと笑うあいつを見て、僕もムキになる。

「じゃあ俺も探すっ!」

僕はあいつが見ていたストラップのタワーを探った。

女の子の名前は舞妓さんと一緒に書かれてあり、男の子の名前は新選組を模したキャラクターと一緒に書かれてある。

僕は新選組の中から、一つのストラップを探し当てた。


「お前がそれ買うなら、俺はこれ買うし」


新選組のキャラクター。

下のタグには、『さとちゃん』と書かれてある。

多分、『さとし』等の男の子の名前を表しているのだろう。


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