雪がとけたら



……………


次の日から、僕はあいつの顔をうまく見ることができなくなった。

朝も、なるべくあいつと顔を合わせない様に努力した。

だって何故だか、あいつの顔を見ると心臓が苦しくなるんだ。

理由のわからない胸の痛みに、僕は病気なんじゃないかと本気で不安になった。





あいつの顔を見ない代わりに、僕はあいつの周りを冷静に見る様になった。

今まで当たり前の様に隣にいたあいつ。

でも、冷静に客観的に見てみると、今まで隣にいたあいつとは違うあいつがいた。



他の女子に比べて、頭一つ分高い身長。

すらっと長い手足に、サラサラの長い髪。

醸し出す雰囲気が、他の女子とは全然違った。

今まで意識して見たことがなかったけど、あいつはクラスの、いや、学年のどの女子よりも大人だった。


そして、そんな風に見ているのは僕だけじゃないことにも気付いた。


遠巻きにあいつを見ながら、ヒソヒソ話す男子達。

今まで気付かなかったのがおかしいくらい、あいつのことを見ている男子は沢山いた。

なんだか無性に腹がたつ。




…悟子のこと、見るんじゃねぇよ。





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