雪がとけたら



驚いた。


原田は僕があいつを好きなことだけじゃなくて、その恋に行き詰まっていることまで見抜いていたのだ。

原田は少し照れたように、『好きな人のことだもん。』と言った。





…僕は、原田の告白を断らなかった。

あいつを忘れるためだけじゃなくて、この子を好きになりたいと思ったのだ。

でも未だに、それは結果として現れていない。

性懲りもなく僕は、あいつを意識したままだった。

そしてそのことも、原田はまた見抜いていた。





「…原田を、傷つけちゃだめだ」


誰もいない部室の中で、言い聞かせる様に僕は呟いていた。

むっとした部室の空気。

原田が僕の頭を拭いたタオルを、あいつを振り払った手で握りしめる。


思い切り頭をふって、勢いよくユニフォームを脱ぎ捨てた。









……………







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