雪がとけたら
……………
その日は久しぶりの雨だった。
夏の雨程気分を滅入らせるものはない。
暑さと湿気の充満した部屋で、僕はタンクトップ一枚で伸びていた。
夏休みも半ばに差し掛かろうとしている。
部活の休みの日くらい憎らしい宿題に手をつけるべきなのだろうが、この空気ではやる気も起きなかった。
ゴロンとベッドの上で寝返りをうち、手にした煙草を掲げる。
西からもらった一本の煙草。
僕は半ばお守りの様にそれを持っていた。
僕がいつかこの煙草を吸う時がきたら、その時は一体いつだろう。
一生こない気がした。
こない方がいいと思った。
…大人になんて、ならなくてもいい。
僕は煙草をベッドの棚に置いて、変わりにポケットの中のものを取りだそうとした。
その時だった。
ミニテーブルの上で携帯が震える。
奇妙な動きをしながら、テーブルの上を旋回する。
メールかとも思ったが、いつまでたってもバイブの止まる気配がしないので、着信だと気付いた。
ポッケから手を取りだし、携帯に無理やり伸ばす。
なんとかベッドの上からでも届き、ドサッと仰向けになって通話ボタンを押した。
「はい?」