雪がとけたら
「中川か!?」
その声の主を理解するのに、少し時間がかかった。
それ程その声は切羽詰まっていた。
「え…西?」
「お前今家?」
僕はベッドからむくっと起き上がった。
西の様子がいつもと違う。
「家だけど…」
「すぐ降りてこいっ!今お前んちの玄関だからっ!」
僕は驚いて窓から覗いた。
玄関には、傘をさして自転車に跨がる西がいた。
…何かあったのだろうか。
聞こうとしたが降りた方が早いことに気付き、「今行く」と言い電話を切った。
一抹の不安を抱えて階段を駆け降りる。
手近にあったビニール傘を手に取り、玄関を開けた。
「中川!」
僕は西に駆け寄る。
「どうしたんだよ、急に…」
「今すぐS駅に行けっ!」
西は僕の胸に白い封筒を付き出して言った。
息は乱れていて、思い切り自転車を漕いできたことがわかる。
「…は?なんだよそれ…」
僕は、西の言葉の意味もこの白い封筒も何もわかっていなかった。
西は息を数回吸って、呼吸を整えた。
自転車から降り、僕の前に立つ。
「西?」
「中川…落ち着いて聞けよ」
その声は妙に冷静で、逆に僕は不安になる。
最後に一息ついた後、西は僕の目を見て言った。