雪がとけたら


「…原田」


手紙をしっかりと握りしめたまま、僕は呟いた。

ピンクのビニール傘の下には、困った様な表情の原田がいた。

「あ…今日雨だし、中川君、部活休みだと思って…ほら、宿題!どうせやってないんだろうなぁって…」

原田は努めて明るく言おうとしていたが、眉間のしわは隠せなかった。

僕は彼女にゆっくり近づく。


「…原田…俺…」
「行かないでっ!」


傘を投げ出して、原田は僕のタンクトップを握りしめた。

「行かないで!お願い!行かないでっ!」

いつも笑顔の原田の目には、涙がいっぱい溜まっていた。

僕は思わず唇を噛み締める。


「お願い…っ」


僕の胸元に頭を預けて、原田は呟いた。

振り絞ったその声は、霧雨の中に響く。




僕は原田を傷つけたくなかった。

今目の前にいるこの子を好きになりたかった。


…でも…。




「…原田」


僕は原田の手を掴んだ。

原田は濡れた顔をあげる。


「俺…原田に甘えてばっかだった。原田の強さに…逃げたんだ。好きになろうと思った。や…なりたいって、本気で思った。」

原田の顔が歪む。

「でも…」

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