雪がとけたら



……………

走った。

ひたすら走った。

霧雨が視界を遮る。

それでも走った。


握りしめた手紙がふやけていくのがわかった。









…『雪ちゃんへ』


いきなりごめんね。


本当はもっと前に言おうと思ってたけど、勇気がなくて言えませんでした。

お母さんの具合があまりよくなくて、もっと大きな市の精神病院に行かなきゃいけなくなったの。

お母さん1人で行かせるわけにはいかないから、家族で引っ越すことになりました。

雪ちゃんはもう、どうでもいいかもしれないけど…でも、どうしても謝りたくて。


…ごめんね。


あの日、雪ちゃんの側にいるって約束したのにね。


そんな約束すら守れなくて…雪ちゃんに嫌われても、仕方ないと思う。


でもあたしは…それでも雪ちゃんが好きです。


離れても、ずっとずっと好きだよ。


雪ちゃんには原田さんがいるってわかってるけど…。ごめんね。


あたしのことは、忘れて構いません。


でも今の気持ちだけは、伝えたかったの。


わがままでごめん。


体に気をつけて、ずっとそのままの雪ちゃんでいて下さい。


バイバイ。


悟子

……………


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