crimson(短編)
「好きな人に彼女がいたの」


"彼女が羨ましい?"


「すごく羨ましい」


"腹だたしい?"


「腹だたしい…とはちょっと違う」


"奪っちゃえば"


「無理。出来ない」


"どうして?"


「勇気無いし…じゃなくて」


違う違う。奪うとか、そんな会話じゃない。

自分の中の闇を必死でかき消す。

そんな会話がしたいわけではない。

もっと…

うん。そうね。

きっと紅茶は私にこう言っている。

"また頑張ればいいじゃん。次があるよ"

「…他人事だと思って。」




失恋の痛手からは、まだ抜け出せそうにない。

だけど今夜は自分の小さな妄想にクスクス笑った。

明日紅茶と食べるタルトはきっと美味しい。
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