む☆げん愛
*初めてノ家出*
私は図書館でかなり時間を潰してしまった。
しかも、勉強なんてしていない。
絵本の新刊がけっこう入っていて、読みこんだ。
絵本を読み終えて帰ろうと入り口に向かったら
新書コーナーに大好きな絵本作家さん。
“ジョン・カール”の自叙伝を見つけてしまって読みふけってしまったのだ。
図書館を出ると
辺りはだいぶ暗くなっていた。
急ぎ足で帰る。
「ただいまー!」
(……静かすぎる)
《タンタタン》階段をリズムよく降りてきたのは弟の優成(ゆうせい)。中学2年生。
玄関で突っ立ったままの私の横でスニーカーを履いている。
「優成…どこ行くの?」
『水泳だよ!』
優成はサッカーの部活動に加えて
週に3回、夜の水泳教室に通っている。
サッカーがチャラチャラしてると嫌う親からの交換条件。
水泳を続けるなら、サッカーをしてもいい。
運動が得意な優成はサッカーがしたい為にその条件をのんだ。
親の思いはこうだ。
サッカーは競技人口が多いから先が難しいけど、水泳だったらインストラクターとか仕事があるから…だそうだ。
勉強が苦手だった優成には、スポーツで成果をあげて欲しいと願う親の気持ち。
わからないでもないけど、最近の優成はイライラしてる。サッカーの朝練もこなして週3回は水泳……
そんな体力がある優成には驚きだけど、スポーツ以外の時間なんてほとんどもてていない。